オフィス移転を検討するきっかけは、事業拡大による人員増加やオフィスの手狭さ、賃料負担の見直しなど、企業によってさまざまです。
しかし、目の前の課題を解消するだけでなく、移転によって何を実現したいのかを明確にすることが、移転先の物件選びやオフィスづくりの方向性を決めるうえで重要になります。
この記事では、企業がオフィスを移転する主な7つの目的・理由を紹介するとともに、自社の移転目的を明確にする方法や、その目的を物件選定・オフィス設計に反映するポイントを解説します。
企業がオフィスを移転する主な目的・理由7選
オフィス移転の目的・理由には、事業拡大に伴うスペースの確保や生産性の向上、人材採用の強化、コストの適正化などがあります。
また、建物の老朽化や賃貸借契約上の事情から、移転を検討せざるを得ない場合もあります。
| 主な目的・理由 | 移転によって目指すこと |
|---|---|
| 1. 事業拡大・人員増加への対応 | 増員や組織拡大に対応できるスペースの確保 |
| 2. 生産性・業務効率の向上 | 動線や執務環境を改善し、働きやすい環境を整える |
| 3. 採用力の強化・人材定着 | 求職者や社員にとって魅力的な職場環境を整える |
| 4. 企業ブランディングの強化 | 企業理念や事業の特徴を伝え、対外的なイメージを高める |
| 5. コスト・面積の適正化 | 賃料や維持費を見直し、事業規模に合ったオフィスにする |
| 6. 多様な働き方への対応 | 業務内容や出社状況に合わせた柔軟な環境を整える |
| 7. 老朽化・契約上の問題への対応 | 建物・契約上の課題を解消し、安全で継続的に利用できる環境を確保する |
1. 事業拡大・人員増加に対応するため
事業の拡大や人員の増加は、オフィス移転を検討する代表的な理由のひとつです。
社員が増えることで執務スペースが手狭になったり、新しい部署の設立に伴って会議室や打ち合わせスペースが不足したりする場合があります。
こうした課題に対応するためには、単に現在より広いオフィスに移転するだけでなく、今後の事業計画や採用計画を踏まえて必要な面積を検討することが大切です。
移転時点の人数だけを基準にすると、計画どおりに増員が進んだ場合、短期間で再びスペース不足に陥る可能性があります。
オフィス移転事例|スズカ税理士法人様
スズカ税理士法人様のインタビューでは、法人化当初約10名だったスタッフが約45名に増え、席数や会議室の不足、動線の使いにくさが移転の背景にあったと語られています。
新オフィスでは、デザイン性と働きやすさの両立を判断の軸に、15名以上が利用できる会議室やWeb会議用の個室ブースなどを整備しました。
増員への対応を、日々の業務に必要な環境づくりまで具体化した事例です。
2. 生産性・業務効率を向上させるため
現在のオフィスに、部署間を移動しにくい、会議室を確保できない、周囲の話し声が気になって集中できないといった課題がある場合、移転を機に執務環境を改善することが考えられます。
例えば、部署間で頻繁にやり取りする業務が多い場合は、関連する部署を近くに配置することで移動や連絡の負担を減らせます。
また、集中作業が多い職場では、周囲の音や視線を遮るスペースを設けることで、作業に取り組みやすい環境を整えられます。
3. 採用力を強化し、人材の定着につなげるため
採用競争が厳しい企業では、求職者にとって魅力的な職場環境を整えることも、オフィス移転の目的になります。
オフィスの立地や通勤のしやすさ、執務環境の快適さは、求職者が働く場所を検討する際の判断材料のひとつです。
特に、採用したい人材の居住エリアや通勤手段を踏まえて立地を検討することで、通勤に伴う負担を軽減し、働く場所としての魅力を高められる可能性があります。
ただし、おしゃれなオフィスに移転したからといって、採用人数や定着率が必ず向上するわけではありません。
採用したい人材が何を重視するのか、既存社員がどのような環境に不満を感じているのかを把握し、自社の採用方針や働き方に合った環境を整えることが大切です。
4. 企業ブランディングを強化するため
オフィスは社員が働く場所であると同時に、取引先や採用候補者などに企業の考え方や事業の特徴を伝える場でもあります。
そのため、企業イメージの向上やブランディングを目的として、オフィスを移転する企業もあります。
例えば、企業理念やコーポレートカラーをエントランスのデザインに取り入れたり、自社の商品やサービスを紹介する展示スペースを設けたりすることで、来訪者に企業の特徴を視覚的に伝えられます。
オフィス移転事例|大同機工株式会社様
大同機工株式会社様のインタビューでは、自社所有地の有効活用をきっかけとして、新しい建物への本社移転を決めた経緯が紹介されています。
新オフィスのエントランスには、主力事業である「水門」をモチーフにしたデザインを取り入れました。
移転のきっかけと、新しいオフィスで自社の事業や特徴を伝えるという狙いが結び付いた事例です。
5. オフィスのコストと面積を適正化するため
オフィスの賃料や共益費、光熱費などの固定費を見直すことも、移転を検討する目的のひとつです。
例えば、テレワークの定着によって出社人数が減少し、使われていないデスクや会議室が増えている場合は、現在より小規模なオフィスへの移転が選択肢になります。
また、複数拠点を集約することで、オフィスの維持管理にかかる負担を見直せる場合もあります。
オフィス移転事例|株式会社ASTYONE様
株式会社ASTYONE様のインタビューでは、増員による手狭さ、会議室不足に加え、外部倉庫に預けていた在庫の保管料が移転を考えるきっかけになったと語られています。
賃料が上がっても在庫を社内で保管できればコスト削減につながると考え、移転先では在庫量の変動に対応できるよう、倉庫と作業スペースを一体化しました。
インタビューでは移転後に在庫管理費用の削減につながったことも述べられています。
賃料だけでは判断できない、事業全体のコストを考えた移転例です。
6. 多様な働き方に対応するため
テレワークやハイブリッドワークなど、働き方の変化に合わせてオフィスの役割を見直すことも、移転の目的になります。
こうした企業では、フリーアドレスやABW(Activity Based Working)の考え方を取り入れ、業務に合わせて働く場所を選べる環境を整える方法があります。
集中作業に適した個人ブース、Web会議用スペース、社員同士が気軽に相談できる打ち合わせエリア、休憩や交流に使えるラウンジなど、業務の特性に合わせて空間を使い分けることが考えられます。
7. 建物の老朽化や契約上の問題に対応するため
オフィス移転は、企業の成長や働き方の改善といった積極的な目的だけで行われるものではありません。
現在入居している建物の老朽化や建て替え、賃貸借契約の終了など、建物や契約上の事情によって移転が必要になる場合もあります。
災害時の事業継続性を高めたい場合は、建物の耐震性能だけでなく、立地の災害リスク、非常用電源の有無、通信環境なども確認する必要があります。
契約上の事情などから移転が避けられない場合も、退去することだけをゴールにせず、現在のオフィスで感じていた不便さや将来の事業計画を整理しておきましょう。
新しいオフィスで実現したい状態を明確にすることで、移転を働く環境の改善につなげられます。
移転の目的に加えて、移転の成功に向けた具体的な取り組みや事例を知りたい方は「オフィス移転を成功させるには?やるべきことと費用、事例を紹介」をご覧ください。
オフィス移転の目的を明確にすることが重要な理由
オフィス移転では、物件の立地や広さ、賃料、レイアウト、設備など、多くのことを決めなければなりません。
その際に判断の基準となるのが、「移転によって何を実現したいのか」という目的です。
移転のきっかけと、達成したい目的は異なる
オフィス移転を検討する際は、移転が必要になった「きっかけ」と、移転によって達成したい「目的」を分けて考えることが大切です。
| 移転を検討するきっかけ | 移転によって達成したい目的 |
|---|---|
| 社員が増えて手狭になった | 将来の増員に対応できる執務環境を整える |
| 会議室が不足している | 必要なときに打ち合わせができる環境を確保する |
| オフィスの賃料負担が大きい | 働きやすさを維持しながら固定費を適正化する |
| 採用活動で人材確保に苦労している | 求職者にとって魅力的で、社員も働きやすい職場をつくる |
| テレワークが定着し、空席が増えた | 出社状況に合ったオフィス規模と働き方を実現する |
| 建物の老朽化が進んでいる | 安全性や設備環境を改善し、安心して業務を続けられる環境を確保する |
物件選定や予算配分の判断基準になる
オフィス移転の目的を明確にすると、物件選定やレイアウト設計、予算配分の際に判断基準を持てるようになります。
| 比較項目 | 物件A | 物件B |
|---|---|---|
| 最寄り駅からの距離 | 徒歩3分 | 徒歩15分 |
| 広さ | やや狭い | 広い |
| 賃料 | 予算上限に近い | 比較的安い |
| 主な特徴 | 駅から近く、来訪者がアクセスしやすい | 広さに余裕があり、賃料を抑えやすい |
※物件A・Bは、目的に応じた判断方法を説明するための架空の比較例です。
採用面接に訪れる求職者のアクセス利便性を重視するのであれば、駅から近い物件Aが有力な候補になります。
一方、今後の増員に備えて十分な執務スペースを確保したい場合や、賃料負担を抑えたい場合には、物件Bが適している可能性があります。
ただし、採用力の強化を目的とする企業にとって、必ずしも物件Aが最適とは限りません。
社員の通勤経路、採用対象者の居住エリア、必要な広さ、賃料以外の費用なども確認する必要があります。
目的が曖昧なまま進めると、移転後のミスマッチにつながる
オフィス移転の目的が曖昧なまま計画を進めると、物件やレイアウトの選定で判断を誤り、移転後に新たな課題が生じる可能性があります。
例えば、見た目のデザインを優先してオフィスをつくった結果、業務に必要な収納スペースが不足したり、社員同士の移動がしにくくなったりするケースが考えられます。
また、賃料の安さだけで物件を選んだ場合、必要な会議室を確保できない、社員の通勤負担が増えるなど、コスト削減とは別の問題が発生することもあります。
| 主なトラブル | 起こり得る問題 |
|---|---|
| 生産性・業務効率の低下 | 動線やスペースの使い方が業務に合わず、作業や移動に無駄が生じる |
| 社員の不満・エンゲージメントの低下 | 働き方や現場の要望が十分に反映されず、新しい環境に不満が生じる |
| 物件選定のミス | 立地や賃料を優先した結果、必要な広さや設備が不足する |
| 予算超過・業務への影響 | 優先順位が定まらず、設計変更や追加工事によって費用・工期が増える |
自社のオフィス移転の目的を明確にする3つのステップ
オフィス移転の目的を決めるには、まず現在のオフィスが抱える課題を把握し、経営戦略と照らし合わせて、何を優先的に改善すべきかを整理する必要があります。
ステップ1:現在のオフィスの課題を洗い出す
移転の目的を明確にするためには、現在のオフィスで何が問題になっているのかを把握することから始めます。
こうした実態を把握するには、経営陣や各部門へのヒアリングに加え、社員アンケートを実施する方法が有効です。
実際にオフィスを利用している社員の声を集めることで、移転担当者だけでは気づきにくい問題も把握しやすくなります。
| 調査項目 | 質問例 | 把握したい課題 |
|---|---|---|
| デスク環境 | 現在のデスクや作業スペースの広さ・使い勝手に不満はありますか? | 作業スペース不足、デスクの使いにくさ |
| 会議スペース | 必要なときに会議室や打ち合わせスペースを確保できていますか? | 会議室不足、予約の集中 |
| Web会議 | Web会議中の周囲の話し声や音漏れが気になることはありますか? | 騒音、プライバシー、Web会議環境の不足 |
| 社内交流 | 他部署の社員と気軽に相談・交流できる場所はありますか? | 部署間コミュニケーションの機会不足 |
| 収納・書類 | 書類や備品の収納スペースは十分に確保されていますか? | 収納不足、書類・備品によるスペース圧迫 |
| 通勤アクセス | 現在のオフィスへの通勤時間やアクセスに不便を感じていますか? | 通勤負担、立地の不満 |
| 室内環境 | オフィスの温度・空調・照明・音環境に不満はありますか? | 温度ムラ、照明の明るさ、騒音 |
アンケート結果は、部署や職種、働き方によって分けて確認することも大切です。
例えば、営業部門ではWeb会議用の個室が不足している一方、管理部門では書類の保管スペースが課題になっているなど、部署ごとに求める環境が異なる場合があります。
ステップ2:経営戦略と照らし合わせて優先順位を決める
現在のオフィスの課題が明らかになったら、それらを自社の経営戦略や今後の事業計画と照らし合わせ、優先順位を決めます。
社員から挙がった要望をすべて実現しようとすると、必要な面積が増えたり、設備や内装工事にかかる費用が膨らんだりする可能性があります。
限られた予算の中で移転の目的を達成するためには、解決すべき課題と、状況に応じて調整できる要望を区別することが大切です。
| 優先順位 | 改善したい課題 | 検討する対策 |
|---|---|---|
| 最優先 | Web会議中の音漏れや周囲の騒音 | 遮音性能に配慮したWeb会議用ブースの設置 |
| 高 | 少人数の打ち合わせに使える場所の不足 | 小規模会議室やオープンミーティングスペースの確保 |
| 中 | 休憩・交流スペースの使いにくさ | ラウンジ家具の配置や既存スペースの活用 |
※上記は優先順位の決め方を説明するための仮定例です。実際の優先順位は、業務内容や社員の意見、予算などにより異なります。
優先順位を決める際は、要望の多さだけでなく、業務への影響、解決の必要性、経営方針との関係も考慮しましょう。
ステップ3:移転の目的と達成目標を言語化する
優先的に解決する課題が決まったら、移転によって実現したい状態を具体的な言葉にまとめましょう。
例えば、「会議室不足を解消したい」という課題であれば、必要なときに会議や打ち合わせができる環境を整えることを目的とし、現在の利用状況に応じて必要な会議スペースの数や種類を検討します。
| 整理する項目 | 設定例 |
|---|---|
| 現在の課題 | 会議室の予約が集中し、必要な時間に利用できない |
| 移転の目的 | 会議や打ち合わせを円滑に行える環境を整える |
| 実現したい状態 | 利用人数や用途に合った会議スペースを確保できている |
| 達成状況の確認方法 | 会議室の利用状況、予約の取りやすさ、社員の満足度を確認する |
ここで重要なのは、目的と、その目的を実現するための手段を混同しないことです。
例えば、フリーアドレスや個室ブースの導入は、働き方や業務環境を改善するための手段です。
導入そのものを目的にしてしまうと、実際の業務内容に合わない設備を選んでしまう可能性があります。
また、移転目的は一つに限定する必要はありません。
事業拡大への対応と採用力の強化など、複数の目的を持つこともあります。
その場合は、最優先の目的と副次的な目的を区別し、関係者間で共有しておくことが大切です。
オフィス移転の目的整理に役立つワークシート
自社の課題を整理し、移転目的の優先順位や社内共有用の方針をまとめたい場合は、「オフィス移転『目的決定』ワークシート&チェックリスト」も活用できます。
現状の課題を洗い出すチェックリスト、目的の重要度診断、優先順位の整理、稟議用ステートメントの作成、推進体制の確認などに使える資料です。
Word形式(.docx)でダウンロードできます。ダウンロード後は直接入力・編集できます。
移転目的を物件選定・オフィス設計に反映するポイント
オフィス移転の目的が明確になったら、その目的を実現するために必要な条件を整理し、物件選定やオフィス設計、予算計画へ反映していきます。
ただし、すべての希望条件を満たす物件が見つかるとは限りません。
移転の目的に照らして、譲れない条件と調整できる条件を区別し、優先順位をつけながら計画を進めることが大切です。
目的に合わせて物件の必須条件を決める
オフィス物件を選ぶ際は、立地や賃料、広さといった条件を個別に比較するだけでなく、それぞれが移転目的の実現にどのようにつながるかを確認しましょう。
| 移転目的 | 重視したい物件条件 | 確認するポイント |
|---|---|---|
| 事業拡大・増員への対応 | 広さ、レイアウトの柔軟性 | 将来の席数、会議室、増員余地 |
| 生産性・業務効率の向上 | 間取り、設備、空間の使いやすさ | 業務動線、必要な会議室数、通信環境 |
| 採用力の強化・人材定着 | 立地、アクセス、周辺環境 | 通勤時間、利用路線、社員の利便性 |
| 企業ブランディング | 立地、建物の外観、内装の自由度 | 来訪者への印象、企業イメージとの整合性 |
| コスト・面積の適正化 | 賃料、共益費、面積 | 初期費用、毎月の維持費、必要面積 |
| 多様な働き方への対応 | レイアウトの柔軟性、設備 | フリーアドレスへの対応、Web会議環境 |
| 老朽化・契約上の問題への対応 | 建物の安全性、設備、契約条件 | 耐震性能、災害リスク、契約内容 |
また、希望するレイアウトが物理的・法規的に実現できるかも重要です。
十分な床面積があるように見えても、柱の位置や設備、避難経路などの制約によって、必要な席数や会議室を確保できない場合があります。
働き方や業務内容に適したレイアウトを計画する
物件を選んだ後は、移転目的を実現するためのレイアウトを具体化していきます。
| 移転目的 | レイアウト・空間づくりの例 | 期待する改善 |
|---|---|---|
| 生産性の向上 | 集中ブース、業務動線の整理 | 集中しやすさや移動効率の改善 |
| 会議室不足の解消 | 少人数会議室、オープンミーティングスペース | 打ち合わせ場所の確保 |
| 社内コミュニケーションの活性化 | ラウンジ、共有スペース | 部署間交流や相談機会の創出 |
| 採用力・人材定着の強化 | 快適な執務環境、リフレッシュスペース | 働く環境の魅力や満足度の向上 |
| ブランディングの強化 | 企業理念を反映したエントランス、展示スペース | 来訪者への企業イメージの発信 |
| 多様な働き方への対応 | フリーアドレス、Web会議用ブース | 業務内容に応じた働く場所の選択 |
ただし、これらの設備を設ければ、必ず目的が達成されるわけではありません。
例えば、フリーアドレスを導入しても、社員が毎日同じ場所に座り続けたり、部署内の連携が取りにくくなったりすれば、期待していた効果を得られない可能性があります。
そのため、レイアウトとあわせて、座席の運用方法や会議スペースの利用ルール、社員への周知なども検討する必要があります。
初期費用と維持費を踏まえて予算を配分する
オフィス移転の予算を検討する際は、移転時に必要な費用だけでなく、移転後も継続して発生する費用を含めて考えることが大切です。
移転時には、新オフィスの敷金・保証金や内装工事費、オフィス家具の購入費、通信設備工事費、引越し費用、旧オフィスの原状回復費など、さまざまな支出が発生します。
一方、移転後には賃料や共益費、光熱費、通信費などの維持費が継続してかかります。
予算を配分するときは、まず移転目的の実現に欠かせない項目を整理しましょう。
例えば、Web会議環境の改善を最優先とする企業であれば、必要な遮音性能を備えた個室ブースや通信設備の整備を優先し、装飾性の高い内装や家具のグレードは予算に応じて調整する方法があります。
目先の賃料だけで判断せず、移転にかかる初期費用と移転後の維持費を合わせて比較し、長期的に無理なく運営できるかを確認しましょう。
そのうえで、移転の目的を達成するために必要な設備や工事に予算を配分することが大切です。
オフィス移転費用の内訳や相場、費用を抑える方法は「オフィス移転にかかる費用の相場とは?内訳と節約方法を解説」で詳しく解説しています。
オフィス移転の目的を実現するための注意点
オフィス移転の目的を明確にし、物件やレイアウトの条件を整理しても、計画の進め方によっては期待していた成果を得られない場合があります。
移転費用・準備期間・業務への影響を事前に確認する
オフィス移転では、物件の契約や内装工事、家具・設備の手配、引越し、旧オフィスの原状回復など、複数の作業を並行して進める必要があります。
| 確認項目 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 移転費用 | 新オフィスの契約費用、内装・設備工事費、家具購入費、引越し費用、原状回復費など |
| スケジュール | 旧オフィスの解約予告期間、新物件の契約時期、設計・工事期間、引越し予定日 |
| 社内の実施体制 | 移転責任者、各部門の担当者、社内の意思決定方法 |
| 通常業務への影響 | 移転準備に必要な作業時間、業務停止が必要な期間、顧客対応への影響 |
| 外部業者との連携 | 物件仲介、内装設計・施工、通信設備、引越し、原状回復などの担当範囲 |
特に、旧オフィスの退去期限が決まっている場合には、その日程から逆算して準備を進める必要があります。
移転先の工事が遅れれば、引越しや旧オフィスの退去にも影響するため、各工程の前後関係を把握し、余裕を持った計画を立てましょう。
移転準備の時期や手順を具体的に確認する際は「初めてのオフィス移転!失敗しないために実践したい6ヶ月間計画を徹底解説」をご覧ください。
移転目的を社員と共有し、新しい働き方を定着させる
オフィス移転は、経営陣や移転担当者だけで完結するプロジェクトではありません。
移転後のオフィスを日常的に利用するのは社員であるため、移転の目的や新しい環境の使い方を共有し、理解を得ながら進めることが大切です。
例えば、働き方の見直しを目的としてフリーアドレスを導入する場合、座席を自由に選べるようにするだけでは、期待した効果を得られない可能性があります。
社員によっては、毎日座る場所が変わることに不安を感じたり、必要な書類や備品の保管方法に戸惑ったりすることもあります。
こうした問題を防ぐためには、なぜ新しい働き方を導入するのかを説明するとともに、座席の利用方法や荷物の管理、部署間の連絡方法など、具体的な運用ルールを整えておく必要があります。
移転後も、実際にオフィスを使用する中で生じた不便さや改善要望を把握し、必要に応じて運用ルールや設備の使い方を見直していくことが大切です。
移転後に目的の達成状況を確認する
オフィス移転は、新しいオフィスで業務を開始したら終わりではありません。
当初設定した目的を実現できているか、移転後の状況を確認することも大切です。
例えば、生産性の向上を目的として会議室を増設した場合は、会議室の数を増やしたことだけで成果を判断するのではなく、必要なときに予約できるようになったか、社員の不満が軽減されたかを確認します。
| 移転目的 | 確認する指標・状況の例 |
|---|---|
| 事業拡大・増員への対応 | 増員後の席数の充足状況、執務スペースの利用状況 |
| 生産性・業務効率の向上 | 会議室の予約状況、業務動線に関する社員の評価、作業環境への満足度 |
| 採用力の強化・人材定着 | 応募状況、採用候補者の反応、社員満足度、離職状況 |
| 企業ブランディング | 来訪者の反応、企業イメージに関するアンケート |
| コスト・面積の適正化 | 賃料・共益費などの維持費、床面積の利用状況 |
| 多様な働き方への対応 | フリーアドレスの利用状況、Web会議スペースの利用状況、社員の評価 |
| 老朽化・契約上の問題への対応 | 設備不具合の発生状況、安全性・BCP上の要件の充足状況 |
ただし、これらの指標が改善したとしても、すべてがオフィス移転だけによる効果とは限りません。
例えば、採用応募数は求人内容や採用市場の状況によっても変わります。
また、社員満足度は働く環境だけでなく、業務内容や組織の状況などにも影響されます。
そのため、移転前の状況を記録しておき、移転後の結果と比較することが有効です。
社員アンケートを実施する場合も、移転前後で同じ質問を使うことで、変化を把握しやすくなります。
まとめ|オフィス移転の目的を明確にして、自社に合う移転計画を立てよう
オフィス移転には、事業拡大や人員増加への対応、生産性の向上、採用力の強化、コストの適正化など、さまざまな目的があります。
また、建物の老朽化や契約上の事情など、やむを得ない理由から移転が必要になる場合もあります。
いずれの場合も大切なのは、単に場所を移すことではなく、移転によって何を実現したいのかを明確にすることです。
目的が定まれば、物件の立地や広さ、レイアウト、設備、予算などを検討する際にも、自社にとって必要な条件を判断しやすくなります。
まずは、現在のオフィスが抱えている課題を洗い出し、経営戦略や社員の意見を踏まえて、優先的に解決したいことを整理しましょう。
そのうえで、移転後に実現したい状態を具体化し、関係者間で共有することが、移転計画の第一歩となります。
オフィスコムでは、企業ごとの課題や移転目的に合わせて、オフィスのレイアウト設計から内装工事、家具の選定まで幅広くサポートしています。
移転の目的がまだ明確になっていない場合も、現状の課題や今後の事業計画を整理するところから、お気軽にご相談ください。
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この記事を監修した人
三谷 弘之
オフィスコム株式会社 取締役常務執行役員
オフィス家具業界で40年、営業として数々のプロジェクトを牽引。お客様の課題に真摯に向き合い、付加価値の高いオフィス環境の提案で高い信頼を得てきました。単なる家具の配置にとどまらず、内装を含めたトータルな空間デザインにより、企業のブランディングや社員の生産性を高める「最適な空間づくり」を実践。40年の豊富な経験とノウハウを活かし、オフィス移転やデザイン、理想の働き方を実現するための実用的な情報を発信していきます。