15~64歳の生産年齢人口が全体の6割を切る今、ひとりひとりの業務効率と生産性を向上させることは喫緊の課題です。
労働人口の減少は深刻で、中小企業では人手不足による倒産が増加しており、2018年の倒産件数は387件、前年比で22%の増加となりました。さらに、2020年4月から「働き方改革関連法」の時間外労働の規制が中小企業にも施行されます。限られた労働力と限られた時間で、どのように業務効率と生産性を向上させていくかは頭が痛い問題です。
今回は、日ごろ私たちが感じる体の不調が大きなコスト(損失)要因になっていたという事実を取り上げ、「健康経営」を手掛かりにオフィスづくりの視点から業務効率・生産性の改善・向上策を考えていきます。目指すは「社員がイキイキと働く健康オフィス」です!
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社員の心身不調が企業の生産性の低下に

仕事中に「肩が凝って痛い」「腰が痛い」「風邪っぽくて体がだるい」「花粉症でつらい」、そこまでの症状が無くても「眠いな」と感じることは誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。
実は、これらの症状こそ「プレゼンティーイズム」と呼ばれ、企業の損失の大きな要因として注目されています。プレゼンティーイズムとは、会社には出勤しているもの心身の不調により業務遂行能力が落ちている状態のことをいいます。また、病気や体調不良により欠勤や休職している状態をアブセンティーイズムといいます。
プレゼンティーイズムは企業の大きなコスト要因
東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニットの調査によると、健康に関するコストのうちプレゼンティーイズムによる損失の割合は77.9%で、医療費の約5倍、アブセンティーイズム(病欠)の約17倍となり、最大のコスト要因であることがわかりました(※表1)。
この構成比は、アメリカのある金融関連企業の従業員を対象に行われた健康関連コストに関する先行調査(※表2)でも同様の結果となっており、プレゼンティーイズムが大きなコスト要因となっていることは間違いなさそうです。
健康関連コストというと間接的なのでわかりづらいかもしれませんが、次のように考えるとわかりやすいのではないでしょうか。例えば、健康な状態であれば100%の能力を発揮できるところ、心身の不調により80%のパフォーマンスしか出せないとしたら生産性が低下しているといえます。
また、通常2時間で終わる仕事が4時間かかったとしたら、会社にとっては損失です。
ある試算データによると、労働生産性の損失を費用換算すると、健康リスクの高い人は低い人の約3倍で、従業員数100人の中小企業であれば1億円規模の損失となるそうです。とてもインパクトのある大きな損失だと思いませんか。
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- 表1 東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニット
平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業
『健康経営評価指標の策定・活用事業成果報告書』より
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- 表2 「Healthy Workforce 2010 and Beyond,2009」
Partnership for Prevention and U.S. Chamber of Commerce
平成29年7月 厚生労働省保険局『コラボヘルス ガイドライン』より
プレゼンティーイズムを引き起こす要因とは
東京大学健康経営研究ユニットが行った「健康リスクと医療費や生産性の損失との関連調査」によると、主観的健康感・生活満足度・仕事満足度・ストレスといった「心理的リスク」がプレゼンティーイズムと最も相関していたことが分かりました。
また、産業医科大学 永田氏による日本の製薬会社4社に勤める13,000人を対象とした調査によれば、プレゼンティーイズムの原因となる症状として上位から、肩こり・腰痛・睡眠不足・眼精疲労・頭痛等が挙げられています。(※表 Nagata T, et al., J Occup Environ Med. (2018))
以上の調査からプレゼンティーイズムを引き起こす要因を大きく分類すると、肩こり・腰痛・疲れ目・頭痛・腹痛のような「運動器・感覚器障害(体の痛み)」、不安感・憂鬱感・ストレス・仕事や生活への満足度合いのような「メンタルヘルスの不調」、そして睡眠不足・風邪やインフルエンザ・アレルギー症状のような「生活習慣及び感染症・アレルギー」の3つに分類できそうです。
どれも特別な病気ではなく、私たちの心身によく起こっている症状ではないでしょうか。もしかすると、肩こり・腰痛・疲れ目などは慢性的になっている方もいらっしゃるかもしれません。これらプレゼンティーイズムの原因となる症状を改善、もしくは未然に予防できれば生産性の低下も改善できそうです。

「健康経営」で体調不良を改善して生産性向上を狙う
プレゼンティーイズムの要因となっている心身の不調を改善する手段として「健康経営」が注目されています。
社員の健康を管理・保持・改善・増進することで労働生産性を上げる経営戦略です。健康診断やメンタルヘルスチェックもそのうちのひとつですが、管理・保持・改善・増進まで関与するのが特徴です。
昔から「体は資本」といわれてきましたが、健康管理は個人の責任でした。しかし、誰もが普段感じている「体調不良」が実は大きな損失となっていたという事実から、社員の健康管理を個人に任せるだけでなく、むしろ会社が先導して生活習慣の改善、健康の管理・保持・促進に関わっていくことで生産性を上げる取り組みが広がっています。社員の健康づくりは、企業の存続と成長のための投資と考えられるようになりました。
「健康経営オフィス」の考え方

生産性を上げる取り組みに「健康経営オフィス」という考え方があります。これは平成27年に経済産業省より出された『健康経営オフィスレポート』中で提唱されている概念です。
「オフィス環境づくりから健康の保持・増進を促すことで、社員が心身ともにイキイキと働き、ひとりひとりが100%の業務パフォーマンスを発揮できるオフィス」のことをいいます。
レポートでは、日常的に「7つの行動」を促すオフィス環境を構築することが重要だとしています。この「7つの行動」が実際にプレゼンティーイズムやアブセンティーイズムの解消につながっていることも報告されています。
健康経営オフィスを実現する7つの行動
「7つの行動」とは、1.快適性を感じる 2.コミュニケーションする 3.休憩・気分転換する 4.体を動かす 5.適切な食行動をとる 6.清潔にする 7.健康意識を高めるといった行動を指します(※表)。
オフィス内でこれら「7つの行動」を日常的に誘発することで、運動器・感覚器障害、メンタルヘルスの不調、心身症、生活習慣病、感染症・アレルギーの予防・改善につなげます。その結果、プレゼンティーイズム・アブゼンティーイズムの問題も解消されます。
オフィス環境は、家具・レイアウト・内装等の「空間」、照明・空調等の「設備」、ICT・インフラ等の「情報通信」、制度・ルール等の「運用方法」を整備することが重要です。その方法については別の機会にご説明したいと思います。
ここでは、7つの行動、及びその行動例とその健康の保持・増進効果についてご紹介します。
働き方(行動) | 健康の保持・増進効果 |
---|---|
1. 快適性を感じる
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運動器・感覚器障害※1の予防・改善 |
メンタルヘルス不調※2の予防・改善 | |
心身症(ストレス性内科疾患)※3の予防・改善 | |
2. コミュニケーションする
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|
メンタルヘルス不調※2の予防・改善 |
心身症(ストレス性内科疾患)※3の予防・改善 | |
3. 休憩・気分転換する
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|
心身症(ストレス性内科疾患)※3の予防・改善 |
4. 体を動かす
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運動器・感覚器障害※1の予防・改善 |
生活習慣病※4の予防・改善 | |
5. 適切な食行動をとる
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生活習慣病※4の予防・改善 |
6. 清潔にする
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感染症 アレルギー※5の予防・改善 |
7. 健康意識を高める
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|
運動器・感覚器障害※1の予防・改善 |
メンタルヘルス不調※2の予防・改善 | |
心身症(ストレス性内科疾患)※3の予防・改善 | |
生活習慣病※4の予防・改善 | |
感染症 アレルギー※5の予防・改善 |
- ※1 運動器・感覚器障害
- 頭痛、腰痛、肩こり、眼精疲労
- ※2 メンタルヘルス不調
- メンタルストレス、ワーク・エンゲイジメント( 働きがい )、うつ病
- ※3 心身症(ストレス性内科疾患)
- 動機・息切れ、胃腸の不調、食欲不振、便秘・下痢(※心身症の内、ストレス性の内科疾患)
- ※4 生活習慣病
- 肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症、脳卒中、心臓病
- ※5 感染症・アレルギー
- 風邪、インフルエンザ、花粉症、その他アレルギー
貴社のオフィスは「健康経営オフィス」合格ライン!?
経済産業省発行の『健康経営オフィスレポート』に「健康を保持・増進する7つの行動」簡易チェックシートがあります。こちらのシートを使って現在のオフィス環境が健康的なオフィスなのか、不健康になる要素が潜んでいるのかをチェックしてみましょう。
問題点を可視化すると具体的な改善策を立てることができます。
また、このチェックシートはオフィス移転やオフィスリニューアルの際に利用することもおすすめです。全社員に回答してもらい統計を取ることで、現オフィスの問題点を可視化できます。
例えば、社員同士があまり挨拶を交わすことがなく、友好的でない傾向が見られた場合は、人が行き交う動線の設計や、執務スペース内にチャット感覚でコミュニケーションが取れるようなスペースの設置が効果的です。
壁紙や床材で明るい雰囲気を演出することや、照明やガラスパーテーションでオープンな空間にするといった方法もあります。
オフィス内に様々な仕掛けをすることで社内にコミュケーションが生まれる仕組みをつくることが可能です。
コミュニケーションを促すオフィス環境作り
オフィスの家具やレイアウトを変更することによって、社員のコミュニケーションを活性化することができます。
最近では、間仕切りを使用せずにできるだけオープンな空間にすることで、人が集まりやすく会話が生まれやすいオフィスにしようという流れが進んでいます。また、オフィスのデスクを固定せずに、気分や目的によって自由に選ぶことのできるフリーアドレスを採用する企業も増えています。
従来のオフィス設計にとらわれずに、社員がいかにリラックスして業務ができるか、部署や部門を超えた交流を生み出せるかといった点を意識しながらオフィス空間を考えると良いでしょう。
▶ 詳しくは「コミュニケーション活性化に有効なオフィス環境とは?」の記事を参考にしてみてください。

フリーアドレス レイアウト例
まとめ|社員が健康でイキイキした環境を作ることが大切

「元気にイキイキ働きたい!」これは、誰もが理想とする働き方でしょう。
もし、貴社の社員がイキイキと働けていないようでしたら、まずは何が原因となっているのか探ってみてください。
労働時間や労働量が多いために疲れてしまっているのか、オフィス環境が悪いために体調を悪くさせてしまっているのか、あるいは人間関係に問題があるためにストレスとなっているのか・・・。「健康を保持・増進する7つの行動」簡易チェックシートを利用すると原因発見の手助けになります。
次に、どのようなオフィスにすれば社員がイキイキと働ける環境になるのかを考えてみてください。その際に是非参考にしていただきたいのが健康経営オフィスの「7つの行動」です。心と体の健康を考えた働き方(行動)の具体例が示されています。
お金を掛けずとも専門家の力を借りずとも、まずは自分たちで「今、元気にイキイキ働けている?」という問いかけに答えてみることから始めてみてはいかがでしょうか。
専門家の力を借りて本格的に健康経営に取り組むのも、オフィス環境に投資するのもその後で十分です。せっかく縁あって一緒に働いている仲間ですから、社員の皆さんが、自社の理念に共感し、同じ目標に向かって、ひとりひとりが持っている力を思いっきり発揮できる会社をつくっていきたいですね!
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