オフィスの内装をつくる場合、火災時に備えるための制限が設けられています。内装制限は法律にもとづいており、使用する材料などを守らなければ罰則を受ける可能性があるため、注意が必要です。
この記事では、オフィスの内装制限の対象と制限内容のほか、その緩和策について解説します。
オフィスの内装制限とは?
オフィスの内装制限とはどのような目的があり、違反するとどういったペナルティがあるのでしょうか。ここでは、オフィスの内装制限の目的と罰則について解説します。
オフィスの内装制限の目的
オフィスの内装制限は、火災時にオフィスにいる人の安全性確保を目的としています。もし、火災が起きたときにオフィスの内装が燃えにくい材料でできていれば、爆発的な延焼(フラッシュオーバー)を抑えられ、それに伴ってオフィスで働く社員は、安全に避難できるでしょう。
そのため、オフィスの居室や避難経路の壁・天井に使用する素材について、「建築基準法」と「消防法」といった法律で厳しく制限しているのです。ちなみに、燃えにくい「防火材料」とは、国土交通省が建築基準法施行令第108条の2で定める、下記の要件を満たすものを指します。
《 建築基準法施行令第108条の2で定義される防火材料の要件 》
- 燃焼しないものであること
- 防火上有害な変型、溶融、き裂その他の損傷を生じないものであること
- 避難上有害な煙またはガスを発生しないものであること
防火材料は3種類に大別でき、それぞれの特徴は次のとおりです。
防火材料の種類と要件
| 種類 | 要件 | 材料の具体例 |
|---|---|---|
| 不燃材料 | 加熱開始後 20 分以上は建築基準法施行令第 108 条の 2 の要件を満たす | ・コンクリート ・れんが ・アルミニウム ・ガラス など |
| 準不燃材料 | 加熱開始後 10 分以上は建築基準法施行令第 108 条の 2 の要件を満たす | ・厚さ 9mm 以上の石膏ボード ・厚さ 15mm 以上の木毛セメント板 など |
| 難燃材料 | 加熱開始後 5 分以上は建築基準法施行令第 108 条の 2 の要件を満たす | ・厚さ 5.5mm 以上の難燃合板 ・厚さ 7mm 以上の石膏ボード など |
オフィスの内装制限に関する法律
内装制限は、建築基準法第35条の2「特殊建築物等の内装」において、下記のように定められています。
《 建築基準法における内装制限 》
別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物、延べ面積が千平方メートルをこえる建築物又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたものは、政令で定めるものを除き、政令で定める技術的基準に従つて、その壁及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分の仕上げを防火上支障がないようにしなければならない。
消防法に関しては下記の第8条で目的が示されており、それを基にした消防法施行規則で具体的に定められています。
《 消防法における内装制限(抜粋) 》
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(これに準ずるものとして政令で定める大規模な小売店舗を含む。以下同じ。)、複合用途防火対象物(防火対象物で政令で定める二以上の用途に供されるものをいう。以下同じ。)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
消防法と建築基準法の内装制限は、対象となる範囲や条件が異なります。
また、自治体の条例などによっても変わるため、詳細は専門業者に確認するのが安心といえるでしょう。
オフィスの内装制限に対する罰則
法律で定められたオフィスの内装制限を遵守しない場合、罰則を科せられる可能性があります。
建築基準法における罰則は、下記のとおりです。
《 内装制限に関する建築基準法の罰則 》
- 個人の違反者:3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
- 法人の違反者:1億円以下の罰金
一方で消防法では、下記のような罰則を科せられます。
《 内装制限に関する消防法の罰則 》
- 個人の違反者:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
- 法人の違反者:3,000万円以下の罰金
オフィスを管理し、社員を雇用する法人にとって、内装制限違反は大きな損失を出す可能性があるだけでなく、社会的信用をも失いかねない行為です。
オフィスの移転に伴う内装工事やリニューアルの場合には、必ず内装制限を遵守するようにしてください。
オフィスの内装制限の主な対象と制限内容
内装制限は、すべてのオフィスが対象となるわけではありません。
また、オフィスによって制限される内容も異なります。
ここでは、オフィスの内装制限の主な対象と制限内容について解説します。
大規模建築物
大規模建築物にあるオフィスは、内装制限の対象となります。
次の条件に該当する大規模建築物では、内装制限を受けることになるので注意が必要です。
大規模建築物の内装制限の条件と内容
| 内装制限を受ける条件 | 制限内容 |
|---|---|
| ・3 階建て以上で延べ床面積が 500 平方メートル超 ・2 階建てで延べ床面積が 1,000 平方メートル超 ・1 階建てで延べ床面積が 3,000 平方メートル超 |
・居室の天井と壁(床から 1.2m 以下の部分は除く)に難燃材料以上の素材を使用する ・通路や階段の天井と壁に進不燃材料以上の素材を使用する |
火気使用室
コンロなどの火を使用する給湯室や浴室を指す「火気使用室」があるオフィスは、内装制限の対象です。火気使用室は、天井と壁に準不燃材料以上の素材を使用する必要があるので注意しましょう。
なお、オフィスの火気使用室でも壁や柱、床などの主要構造部が耐火被覆を施した「耐火構造」になっている場合、内装制限は適用されません。
また、IHコンロの場合も対象外です。
無窓居室
オフィスにおける内装制限の対象として「無窓居室(むそうきょしつ)」が挙げられます。
無窓居室は、単に「窓がない部屋」ではなく、建築基準法で規定されている採光・換気・排煙・避難の各基準を満たさない居室のことです。
具体的には、下記の条件に該当する無窓居室が内装制限を受けます。
《 無窓居室で内装制限を受ける主な条件 》
- 居室の床面積が50平方メートルを超えるもの
- 天井高が6m以下
- 天井から下方80cm以内にある、開放できる部分の面積が床面積の1/50未満
無窓居室の内装は、居室の天井や壁に関して、準不燃材料以上の素材を使用しなければなりません。
特殊建築物の内装制限とは?
特殊建築物とは、不特定多数の人が利用する病院や学校のほか、宿泊施設、百貨店などのことです。
これらの建物は「火災の危険性が高い」として、厳しい内装制限が設けられています。
なお、一般的なオフィスビルは特殊建築物に該当しません。
ただし、飲食店や店舗などが入居しているオフィスビルは、その部分だけが特殊建築物として扱われることになります。
オフィスの内装制限緩和策
オフィスの内装には建築基準法による厳しい制限が設けられているものの、一定条件を満たせば緩和される可能性があります。
自治体などによって異なるものの、ここでは、一般的なオフィスの内装制限の緩和策について解説します。
無窓居室の場合は天井高を確保する
オフィスビルの設計・建設段階における内装制限の緩和策としては、無窓居室の天井高を高く、具体的には6m以上にすることが挙げられます。
天井を高くすることで、火災の際に煙が居室内に充満するまでに時間がかかり、安全な避難に役立つのが理由です。
例えばデザイン上、小さな窓しか確保できない執務スペースの場合、天井高を6m以上確保すれば、内装制限の緩和対象となる可能性があります。
ただし、天井を6m以上確保できるオフィスビルの居室は、かなり限られる点に注意してください。
自動式スプリンクラーなどの設備を設置する
オフィスの内装制限に関して、自動式スプリンクラーなどの設備を設置するのも、緩和策の一例です。
具体的には、自動式スプリンクラー設備の水を散布する消火設備を備え付けることで、壁や天井の不燃材料使用が緩和される可能性があります。
なお、これらの設備は基本的に排煙設備も設置することが条件になるので、注意してください。
柱・梁などの表面積を壁・天井面積の10分の1にする
新たに建てるオフィスビルを木造化する際、木の柱・梁や照明設備のカバー(不燃材料でないもの)の表面積を、壁や天井の面積の10分の1以内に抑えることも、建築基準法における内装制限の緩和策のひとつです。
また、装飾目的で壁や天井に設置した小規模の角材も、内装制限の緩和対象となります。
3,000 平方メートル超の木造オフィスの内装制限緩和
2025年に施行された改正建築基準法により、延べ床面積が3,000平方メートル超の中大規模建築物を木造化促進に伴って、内装制限が緩和されることになりました。
それまでは壁や柱を耐火構造とし、3,000平方メートルごとの耐火構造帯による区画が必要とされていました。
建築基準法改正後は、柱や梁などの構造材が見える状態で仕上げる「現し(あらわし)」を採用した設計が可能になる構造方法が導入されています。
具体的には、通常より太い大断面材を使用した「燃えしろ設計」や防火区画の強化などが条件です。
2050年の脱炭素社会実現に向け、政府が後押しする木造オフィスに関心がある場合は、知見のある専門業者に相談することをおすすめします。
オフィスの内装工事に関する注意点
オフィスの内装制限に関しては、いくつか気をつけるべきポイントがあります。
最後に、オフィスの内装制限に関する注意点について解説します。
オフィスビル独自のルールに注意する
オフィスの内装工事に関する注意点として、法律で定められている内装制限以外に設けられた、オフィスビル独自のルールをきちんと確認することが挙げられます。
オフィスビルによっては、工事可能な時間や搬入・搬出経路など、厳しい制限があるので注意しましょう。
また、工事を行えるのがオフィスビル側が指定する業者に限定されている場合もあります。
内装工事前に、事前の確認が求められます。
居抜き物件でも法規チェックが必要
オフィスの内装に関しては、前テナントが使用していた内装をそのまま使用する「居抜き物件」でも注意してください。
前テナントが使用していても、必ずしも最新の建築基準法や消防法を遵守していたとは限らないからです。
居抜き物件を使用する場合には、内装制限に関する法律に適合しているかどうかのチェックが必要です。
専門業者に相談し、適切に対応してもらいましょう。
オフィスの内装制限に関する相談は専門業者へ
オフィスの内装制限は、火災時における社員の安全な避難経路確保などのために極めて重要なものです。
内装制限に違反すると、企業として重い罰則を受ける可能性があるため、緩和策も確認しながら、確実に対策したいところです。
オフィスの内装工事の際に、木造化も視野に入れつつ、内装制限を踏まえたサポートを受けたいなら、実績ある専門業者に相談するのがおすすめです。
オフィスコムでは、年間施工実績3,000件の確かな実績とプランニング力で、オフィス物件選定からオフィスの内装工事まで、トータルコンサルティングを提供しています。
オフィスの内装制限に関する疑問やお悩みは、どんなことでもお気軽にご相談ください。