ウェルビーイング経営は、社員が満たされた状態で、いきいきと仕事に取り組めるようにする経営手法です。
メリットの多いウェルビーイング経営を推進するために、オフィスリニューアルによる環境整備や働きやすさを向上させる制度の導入など、企業にはできることがたくさんあります。
この記事では、ウェルビーイング経営の要素と健康経営との違いのほか、取り組むメリットについて解説します。
また、オフィスで推進する際の具体的な始め方や企業の導入事例もあわせてご紹介します。
ウェルビーイング(Well-being)とは「well(良好な)」と「being(~の状態であること)」を組み合わせた言葉です。
WHO(世界保健機関)の設立憲章では「身体的・精神的・社会的に、すべて満たされて良好な状態」のことと定義されています。
つまりウェルビーイング経営とは、単に病気ではないというだけでなく、自社の社員が心身ともに健康で、やりがいを持って前向きに働ける環境をつくる企業経営のことです。
なお、ウェルビーイング経営の対象は社員だけではなく、顧客や取引先のほか、株主など企業を取り巻くすべてのステークホルダーを含める場合もあります。
ウェルビーイングの要素としては、心理学者のマーティン・セリグマンが提唱した「PERMA(パーマ)理論」がよく知られています。
これは、下記の5つの頭文字を取った理論です。
これらの要素の有無は、ウェルビーイング経営の実現に大きな影響を及ぼすとされています。
一方で、アメリカの世論調査・コンサルティング会社であるギャラップ社は、下記の5要素によるフレームワークを提唱しています。
アプローチの視点は異なりますが、これらの要素は、どちらの理論においても「持続的な幸福」を実現するためのウェルビーイング経営に欠かせない要素として位置づけられています。
ウェルビーイング経営と混同されることが多い言葉に「健康経営」があります。
健康経営は企業視点で、社員の心身の健康にフォーカスを当てているもの。
定期健康診断やストレスチェックサーベイなどで「マイナスをゼロにする」ための施策(健康増進・過重労働対策・メンタルヘルスなど)を通じて、生産性向上へとつなげる経営手法です。
それに対してウェルビーイング経営は、健康経営よりさらに対象や範囲が広いものを指します。
社員の心身の健康だけでなく、社会における総合的な幸福に向けて取り組む経営施策で、「ゼロをプラスにする」ための施策(オフィス環境改善・社内交流活性化・自己実現支援など)を通じて、「社員の幸福や社会的充足」へとつなげる経営手法です。
ウェルビーイング経営がにわかに注目を集めているのは、どういった理由があるのでしょうか。
ここでは、ウェルビーイング経営が注目される背景について解説します。
ウェルビーイング経営が注目される背景のひとつに、少子高齢化に伴う労働人口減少による、人手不足があります。
日本の労働環境の変化により、各産業で深刻な人手不足となる中、優秀な人材の採用と流出防止は最優先課題です。
競合他社との差別化を図り、選ばれる企業になるためには、社員が「ここで働き続けたい」と思える快適な労働環境の整備が不可欠となっています。
ウェルビーイング経営推進の一環として、快適で働きやすいオフィスを整備することは、優秀な人材の確保につながっていきます。
働き方改革の浸透やワークライフバランスの重視など、働き方に対する価値観は多様化していることも、ウェルビーイング経営が注目された背景にあるといえます。
社員の長時間労働の是正はもちろんのこと、育児や介護と仕事を両立させるためには、柔軟な働き方を容認する制度の策定やITツールの導入、それを支える職場環境の改善が必要です。
ウェルビーイング経営を推し進めることは、こうした新しい価値観に応えるために役立つでしょう。
企業としてウェルビーイング経営に取り組むメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、企業がウェルビーイング経営に取り組むメリットについて解説します。
企業がウェルビーイング経営に取り組むメリットとして、生産性の向上があります。
心身ともに健康で満たされ、モチベーションの高い社員は、高い集中力を維持して業務に臨むことができます。
企業として、職場環境を改善し、幸福度の高い社員の割合を増やすことは、結果として組織全体の生産性やクリエイティビティの向上に直結します。
離職率の低下は、企業がウェルビーイング経営に取り組んだ場合に得られる大きなメリットです。
社員が「この会社は、社員をとても大事にしてくれる」と実感できるオフィスや制度を整えることで、会社への愛着(従業員エンゲージメント)が深まります。
社員を大切に思う企業の姿勢は、社員の従業員エンゲージメントを高め、離職しそうな社員を引き留める材料にもなります。
これにより離職率が低下すれば、新たに社員を採用したり育成し直したりするコストが不要になるでしょう。
結果として、採用・教育コストの削減にもつながり、経営基盤の安定化に貢献します。
企業がウェルビーイング経営に取り組むメリットとして、優秀な人材の獲得があります。
売り手市場の時代において「多様な働き方に対応した働きやすいオフィス」や「社員の幸福度向上のために整備された制度」などは、求職者にとって非常に大きな魅力です。
ウェルビーイング経営を前面に打ち出すことで、質の高いエントリーの増加や優秀な人材の確保につながります。
ウェルビーイング経営に力を入れて優秀な人材を獲得することは、結果として企業の業績向上や新規事業の創出など、さらなる好循環を生み出すでしょう。
企業としてウェルビーイング経営に取り組んだときに得られるメリットとして、企業ブランディングがあります。
企業ブランディングとは、ステークホルダー(取引先、株主、地域社会)に対し、「人を大切にする企業」としてのポジティブなイメージを認知してもらうことです。
社員だけでなく、すべてのステークホルダーの幸福を願うウェルビーイング経営は、企業としての信頼度を向上させるだけでなく、昨今重視されるESG(環境、社会、ガバナンス)投資の観点からも高い評価を受けやすくなり、企業の持続的な成長に寄与することでしょう。
ウェルビーイング経営は、いくつかのポイントを押さえながら推進しましょう。
ここでは、ウェルビーイング経営をオフィスで推進する際のオフィスや社内制度で実践できる具体的なポイントについて解説します。
ウェルビーイング経営推進におけるポイントとして、労働環境の見直しがあります。
具体的には、必要に応じて、オフィスへの出社とリモートワークを選ぶことができるハイブリッドワークや業務内容やその日の気分に合わせて働く場所を自由に選べる「ABW(Activity Based Working)」といった、多様な働き方を実現できるオフィスの構築があります。
執務スペースに決められた固定席ではなく、集中スペースやリフレッシュスペースなど、さまざまな場所を自由に選べて働けるオフィスは、社員の満足度や業務効率を同時に高めます。
それによってモチベーションがアップした社員はいきいきと業務に取り組み、高い成果を出してくれるでしょう。
社内コミュニケーションの活性化は、ウェルビーイング経営の推進において重要なポイントです。
部署の垣根を越えたコミュニケーションは、心理的安全性や帰属意識を高めます。
社内でのイベント開催や、挙手制のプロジェクト参画の仕組みによって、社員間の横のつながりが生まれ、新たな事業創出が期待できるかもしれません。
社内コミュニケーションの活性化に関しては、オフィス内に「思わず人が集まり、雑談が生まれるリフレッシュスペースやマグネットスペース」を設置することが有効なアプローチとなります。
ウェルビーイング経営推進に関しては、従業員サーベイの実施もポイントのひとつといえます。
従業員サーベイとは社員の心身の健康状態や企業に対する満足度を調査するもので、ストレスチェックやエンゲージメントサーベイがその代表例です。
社員の現状の幸福度や課題を把握するために、従業員サーベイを定期的に実施しましょう。
可視化されたデータをもとに、社内制度の見直しやオフィスリニューアルなどの具体的な改善策へとつなげましょう。
ウェルビーイング経営において重要な要素である、社員の精神的健康の推進は、メンタルヘルスケア制度の充実によって実現できる可能性が高くなります。
これはストレスチェックなどのサーベイを使って、社員のメンタルヘルスの不調レベルを把握した上で、精神的な健康維持のために、不調を未然に防ぐ・または早期発見できる仕組みを作ります。
外部の専門カウンセリング窓口の設置や、産業医と気軽に面談できる体制を整え、社員が安心して相談できるセーフティネットを整えましょう。
ウェルビーイング経営を推進するためのポイントとして、システムやツールの導入も欠かせません。
コミュニケーションを円滑にするチャットツールなどの導入も効果的です。
テクノロジーを活用して、互いを認め合うカルチャーを醸成していきましょう。
このほか、健康診断情報を管理するシステムや精神的状態を可視化するストレスチェック、感謝の気持ちをポイントで贈り合う「ピアボーナスツール」などの導入も、社員の心理的安全性を高め、ウェルビーイング経営の実現に効果が期待できます。
社員の副業・兼業を解禁し、推奨することも、ウェルビーイング経営実現におけるポイントといえるでしょう。
これは、副業を通じて、社員のスキルアップや経済的安定、地域社会とのつながり(Community Well-being)の強化に寄与することが、社員の総合的な幸福につながるという考え方によるものです。
副業・兼業を推進することで、社員が自社以外の場所でも自分らしく働けることは社員自身の成長にもつながり、結果として、他社での経験やノウハウが自社に還元され、イノベーション創出のきっかけになるというメリットもあります。
ウェルビーイング経営をオフィスで体現するには、実際の事例を参考にするのがおすすめです。
ここでは、ウェルビーイング経営を体現したオフィスの事例についてご紹介します。
中期経営計画のテーマ「イキイキ働ける労働環境の整備」にもとづき、オフィスリニューアルした事例です。
社員一人ひとりの声に耳を傾けながら決められたコンセプトは「木目調とグリーンで彩る北欧モダン」。
温かみのある天然木の質感や目に優しいグリーンの装飾は、機能性と居心地の良さを両立しています。
雑多で統一感がなく、コミュニケーションが取りづらかった空間を刷新。
「クリエイティブな仕事に集中できるエリア」と「ランチをしながら、気軽にコミュニケーションが取れる休憩スペース」を明確に分けました。
オフィス環境の変化が、社員のポジティブな行動変容を見事に促した事例です。
「国籍や性別、役職の異なるメンバーが、共に明るく働ける空間を」という要望に、オフィスリニューアルで応えました。
さまざまな協議の中で生まれた「カフェのようにくつろぎながら働ける空間」は、社内の心理的安全性と一体感が向上する風通しが良く、お互いの状況が自然と視界に入る設えです。
今や社員全員のお気に入りとなっています。
ウェルビーイング経営は、人材獲得や企業ブランディング、持続的な成長において多大な効果を発揮します。
ウェルビーイング経営に取り組むには、その第一歩として、もっとも身近な労働環境である「オフィスのリニューアル」から始めてみてはいかがでしょうか。
すべての社員が居心地良く、いきいきと働ける空間を構築するなら、オフィスリニューアルの豊富な実績を持つ専門業者への相談が近道です。
オフィスコムは、お客さまの事業内容や理想のオフィスをヒアリングし、最適なオフィスリニューアルをご提案しています。
3,000件以上の確かな施工実績とプランニング力で、オフィス物件選定からオフィスの内装工事まで、トータルコンサルティングを提供します。
ウェルビーイング経営を意識したオフィスリニューアルに関する疑問やお悩みは、どんなことでもお気軽にご相談ください。